つ る と か め

 

さしえ
さしえ
さしえ
さしえ
さしえ

 むかーしむかしのお(はなし)じゃ。
 あるところに小さな(いけ)があって、そこには一匹(いっぴき) のかめが()んでいたんだと。ある(あつ)(なつ)のこと。毎日(まいにち)カンカン()りのお天気が(つづ)いたせいで、小さな池の水がだんだん なくなってきたそうじゃ。かめは空を見上(みあ)げては
「早く雨がふらないかなぁ。こんなに毎日暑かったら、ぼくの甲羅 (こうら)がかわいてしまうよ。」
()って、ため(いき)をついて いたそうじゃ。
 そんなある日、一羽(いちわ)のつるがその小さな池に() たんだと。(こま)っていたかめはつるに相談(そうだん )したそうじゃ。
「つるさん、毎日暑くて雨がふらないから 池の水がへってきたんだよ。このままだと、 水が()くなって、ぼくは生きていけなくなるよ。」
「それは困ったことだね。それなら、ここから(べつ) の池に引っ越し(ひっこし)てみたらどうだい。さっき()んでいた(とき)に見たんだが、ほら、あそこに見える山の()こうに大きな池があったよ。(きみ)仲間 (なかま)もたくさん見えたから、そこに()ってみたらどうだろう。」
「それはいい(かんが)えだね。でもぼくがあの山 の向こうまで行くなんて、いったい何日(なんにち)かかるだろう。池につくまでにぼく はひからびてしまうんじゃないだろうか。」
「じゃあ、こうしよう。ぼくが君を大きな池まで(はこ) んであげるよ。飛んでいけば山の向こうまでだってすぐに()くからね。」
つるは(ちか)くにあった(ほそ)(えだ)を見つけてかめにこう言ったそうじゃ。
「ほら、この枝の先を君がくわえて、反対(はんたい) (はし)をぼくがくわえて飛んでいけば大丈夫(だいじょ うぶ)だよ。」
「ありがとう、つるさん。ぼくしっかりと枝をくわえているよ。」

さしえ
さしえ
さしえ
さしえ
さしえ
 かめをぶら下げて、つるは空(たか)く飛びあがったそうじゃ。 どんどん飛んで、向こうにあった山がすぐ近くになってきたその時、ちょうどつるが飛んでいた下に村があってな、 子ども(たち)が空を見上げて、こう言ったんだと。
「あんなところに、つるにぶら下げられたかめがいるぞ。なんて、おかしい 格好(かっこう)をしているんだろう。あっはっはっは。」
かめは、子ども達に(わら)われて、
「うるさい。へんな格好なんかしてないぞ。」
と、言ってしまったそうじゃ。くわえていた枝を口からはなしたもんだから、かめは地面 (じめん)()ちてしまったそうな。

さしえ
さしえ
さしえ
さしえ
さしえ
 高い空から地面に落ちたその時に、かめは背中(せなか) (つよ)()ったんだと。そうしたら、背中の甲羅にひ びが入ってしまったそうじゃ。
 (いま)でもかめの甲羅にはもようが入っているじゃろう?これはかめが落ちて背中を 打った時からずっと入っているひびがもようになったそうじゃ。
 はい、おしまい。

 

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